M.SHI.'s SCIENTIFIC WANDERING

水中での重さ60キロのマネキン？

2001年8月25日の朝日新聞朝刊の記事より……。

60キロのマネキン「救助」

秋田のワールドゲームズ

秋田県で開催中の第６回ワールドゲームズで24日、ライフセービング競技が始まった。秋田市の県立総合プールでは７種目行われる。女子100メートルレスキュー個人メドレーは、50メートルを自由形で泳いだあと潜水し、沈んだ重さ約60キロのマネキンを引き揚げ、抱えてゴールに向かう。世界記録が更新されるなど、熱戦が繰り広げられた

えっ？　「沈んだ重さ約60キロのマネキン」？？

これはもちろん、「質量約60キログラム」の誤りですね。あるいは、「空気中での重さ約60キログラム重」と言うべきでしょうか（「沈んだ重さ」っていう文章も変ですね）。

さて、質量60kgのマネキンは、水中での重さは何kg重になるのでしょう？

このマネキンの比重が人体と同じだとすると、約1.07です。つまり、このマネキンのかけら1リットル（1000cm³）の重さは、1.07kg（1070g）です。

したがって、質量60kgのマネキンの体積は約56リットルですから、水中では約56kg重の浮力を受けます。

そこで、このマネキンの水中での重さは、約4kg重ということになります。

えっ、たった4キロ？　という気もしますが、ぐったりと脱力した人体を抱えて運ぶのは大変なことです。泳ごうとすると、水の抵抗は二人分ですし。

ところで、水中での重さが60kg重、比重1.07のマネキンがあったとすると、その質量はどれくらいでしょう？

……答えは、約917kgです。……小型自動車ほどの人体なんて、ちょっと考えられませんね。

(2001/08/27)